浅々
浅々
名詞
標準
文例 · 用例
書を読みながら他の事を思うというのでもなく、ただ浅々と書を読み、弱々と書を味わい、精彩なく気力なく、書物に対しているようなことは、これまた気が張っていないで、即ち気が弛んでいるのである。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
政さんはしきりにおとよさんの方をぬすみ見て、おとよさんが省作に対する動作に何物かを発見せんとつとめているけれど、政さんなんかに気取られるようなそんな浅々しいおとよさんではない。
— 伊藤左千夫 『隣の嫁』 青空文庫
いはんやメエルハイムの如く心浅々しき人に、イイダ姫嫌ひて避けむとすなどと、おのれ一人にのみ係ることのやうにおもひ做されむこと口惜しからむ。
— 森鴎外 『文づかひ』 青空文庫
いわんやメエルハイムのごとく心浅々しき人に、イイダ姫嫌いて避けんとすなどと、おのれ一人にのみ係ることのようにおもいなされんこと口惜しからん。
— 森鴎外 『文づかい』 青空文庫
路傍の柿の樹は枝も撓むばかりに黄な珠を見せ、粟は穂を垂れ、豆は莢に満ち、既に刈取つた田畠には浅々と麦の萌え初めたところもあつた。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
浅々と萌初めた麦畠は、両側に連つて、奈何に春待つ心の烈しさを思はせたらう。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
雑木林や平坦な耕地の多い武蔵野へ来る冬、浅々とした感じの好い都会の霜、そういうものを見慣れている君に、この山の上の霜をお目に掛けたい。
— 島崎藤村 『千曲川のスケッチ』 青空文庫
更に小諸町裏の田圃側へ出て見ると、浅々と萌え出た麦などは皆な白く埋もれて、岡つづきの起き伏すさまは、さながら雪の波の押し寄せて来るようである。
— 島崎藤村 『千曲川のスケッチ』 青空文庫