幻辞.com

木暗い

こぐらい
形容詞
1
標準
文例 · 用例
谷底の木暗いしじまで握飯を食べ終ると、龍然は凡太にもすすめておいて、自分は平たい岩塊の上へ仰向けに寝転び、やがて深い睡りに落ちてしまつた。
坂口安吾 黒谷村 青空文庫
私達は重なり合つて木暗い坂道を転がりながら――そして、私自身の幻の中でも、そして、幻を見る私自身の感覚までが、私達は重なり乍ら、まるで空気となつたやうに、其処に見えなくなるのであつた。
――あるミザントロープの話―― 青空文庫
一面に松とポプラの繁茂した林であつたが、その木暗い片隅に三脚を据えで、画布に向つてゐる傲岸な眼を発見した。
坂口安吾 傲慢な眼 青空文庫
傾斜とよぶよりも断崖に近いものですから、蔓草にすがり灌木の根に足場を定めて這ひ降りるわけですが、その木暗い谷底の差し交じる枝葉の下には光も乏しい深さまで辿りつくためには男一匹でさへ相当の労力を要します。
坂口安吾 淫者山へ乗りこむ 青空文庫
思ひがけない出来事に驚きの叫びもでない蒲原氏が、やうやく我に返つて頭をあげ、草木の密生した木暗い頭上の山を仰ぐと、なにぶん頭上のことではあり草木の密生した山のことで、人の像は分らないが、ガサ/\と草をわけて逃げる物音がきこえてゐた。
坂口安吾 逃げたい心 青空文庫
石の落ちてきた曲路までなんとなく行つてみたいと思ひながら、蒲原氏はふとただ一人温泉をさまよひでたが、女のゐたと思はれる繁みの上へ坐つてみたり、辺りの木暗い叢をうろついてみたい想念は意外に強いことが分つた。
坂口安吾 逃げたい心 青空文庫
私はそれに直接不安ではなかったが、やっぱり麦畑の丘や原始林の木暗い下を充ちたりて歩いているとき、ふと私に話かける私の姿を木の奥や木の繁みの上や丘の土肌の上に見るのであった。
坂口安吾 風と光と二十の私と 青空文庫
洗われて真っ白になった一個の頭蓋骨が、木暗い崖すそに、半ば埋もれていた。
筑紫帖 私本太平記 青空文庫
木暗い(こぐらい) — 幻辞.com