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記実

きじつ
名詞
1
標準
文例 · 用例
」わたくしは大胆な記実を喜ぶ。
森鴎外 伊沢蘭軒 青空文庫
彼は独り批評家として之を論ずるのみならず、記実家として劇の内外に関する事実を報道すること、甚だ力めたりと言ふべし。
北村透谷 劇詩の前途如何 青空文庫
読者がさういふことを感ずるのは、作者その人がその自伝的記実を単に自己のものとしてないで、万人のものとしてゐるところから起つて来てゐるためであつて決して懺悔的にやつてゐるためではない。
田山録弥 批評的精神を難ず 青空文庫
勿論二葉亭の文学や事業を批評したのではなく、いわば履歴書に註釈加えたに過ぎないので、平板なる記実にもし幾分たりとも故人の人物を想到せしむるを得たならこの一篇の目的は達せられている。
内田魯庵 二葉亭四迷の一生 青空文庫
然るに新聞紙の材料は巧遅なるよりは拙速を重んじ、堂々たる大論文よりは新鮮なる零細の記事、深く考慮すべき含蓄ある説明よりは手取早く呑込む事の出来る記実、噛占めて益々味の出るものよりは舌の先きで甞めて直ぐ賞翫されるものが読者に受ける。
内田魯庵 二葉亭四迷の一生 青空文庫
文学は伝記にあらず、記実にあらず、文学者の頭脳は四畳半の古机にもたれながらその理想は天地八荒のうちに逍遙して無碍自在に美趣を求む。
正岡子規 俳人蕪村 青空文庫
芭蕉も初めは菖蒲生り軒の鰯の髑髏のごとき理想的の句なきにあらざりしも、一たび古池の句に自家の立脚地を定めし後は、徹頭徹尾記実の一法に依りて俳句を作れり。
正岡子規 俳人蕪村 青空文庫
しかもその記実たる自己が見聞せるすべての事物より句を探り出だすにあらず、記実の中にてもただ自己を離れたる純客観の事物は全くこれを抛擲し、ただ自己を本としてこれに関連する事物の実際を詠ずるに止まれり。
正岡子規 俳人蕪村 青空文庫