捨言
捨言
名詞
標準
文例 · 用例
余所の垣根の梅を折つて今や帰らんとする時、貰ひますよと一言の捨言葉を残したるを「もらふ声あり」と手短かに言ひたる、さすがに老熟と見えたり。
— 正岡子規 『俳諧大要』 青空文庫
慚しげに面を赧らむる常の樣子と打つて變りし、さてもすげなき捨言葉に、冷泉|訝しくは思へども、流石は巧者、氣を外さず、『其の御心の強さに、彌増す思ひに堪へ難き重景さま、世に時めく身にて、霜枯の夜毎に只一人、憂身をやつさるゝも戀なればこそ、横笛樣、御身はそを哀れとは思さずか。
— 高山樗牛 『瀧口入道』 青空文庫
私の貧しい知識でいつても、ごく稀な場合「幕府譯官」などと敬稱されるが、普通には「長崎通辯何の何兵衞」といつた卑しい言葉で、そこらの輕輩武士からも捨言葉される傾きがあつたやうだ。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
例へばのちにみるやうに、土佐侯容堂の造船企畫について昌造が與かつた當時のことを、同藩家來寺田志齋が、その日記のうちで、かなりの捨言葉で誌してゐるのにもみることが出來る。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
今夜は月夜じゃけ、足元は明かるいわ」 腹立ちまぎれ、無茶のような捨言葉を残して、妾宅を出た。
— 火野葦平 『花と龍』 青空文庫
後で嘆くな) と、最後の捨言葉を吐いて、千鳥庵の運座の帰りを待ちうけていたか、或はそこへ行く摺れ交いに、先夜の暴行をかっとしてやったものだった。
— 吉川英治 『※かみ浪人』 青空文庫
そして「預言者は自分の郷里、自分の親戚、自分の家族以外の所に行けば、どこででも尊敬せられるのだ」と捨言葉を残され、彼らの不信仰を怪しみつつ郷里の村を去り給うたのです(六の四―六)。
— マルコ伝による 『イエス伝』 青空文庫