気を取られる
きをとられる
表現動詞-一段
標準
to have one's attention caught (by)
文例 · 用例
船の進むにつれて最早気味悪き音はやんで動揺はようやく始まりて早や胸悪きをじっと腹をしめて専ら小説に気を取られるように勉むればよう/\に胸静まり、さきの葡萄酒の酔心。
— 寺田寅彦 『東上記』 青空文庫
誰も降りた様子もないし、いくら待ってみても、国道から曲って来る人影もないので、夫人は病児 Kenneth のところへ帰って、看病に気を取られるまま二十分余り経った。
— 牧逸馬 『双面獣』 青空文庫
そしてそうした晩は、みんなその方に気を取られるので、新聞は売れなかった。
— ――獄中手記―― 『何が私をこうさせたか』 青空文庫
ところで、めしの時間まで、少し暇をおきましたのは、話よりめしの方に気を取られるといふ心配があつたからではなく、一円の料理では、さう皿数を重ねるわけにも行くまいと思つたからであります。
— 岸田國士 『新劇倶楽部創立に際して』 青空文庫
この「間に合せ」主義は、事急を要する問題が次々に起つて来て、それを処理するのに絶えず忙殺されてゐた結果で、眼前の事態にのみ気を取られる余裕のなさを語るものでありますが、それにしても、これが世間普通のことになつて、誰も怪しむものがないといふ風潮は、決してさういふ口実によつて救はれることはできません。
— ――力としての文化 第二話 『日本文化の特質』 青空文庫
老婦人 (時々声のする方に気を取られるらしい。
— 岸田國士 『落葉日記(三場)』 青空文庫
そんなことじゃないと父が云っても、母は始終その方へ気を取られるらしく、姉とくどくど相談してることもあった。
— ――或る青年の「回想記」の一節―― 『黒点』 青空文庫
丑松は素知らぬ顔、屋外の方へ向いて、物寂しい霙の空を眺めて居たが、いつの間にか後の方へ気を取られる。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫