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舌舐り

したなめずり
名詞
1
標準
文例 · 用例
昇はそれを承知しているゆえ、後の面倒を慮って迂濶に手は出さんが、罠のと知りつつ、油鼠の側を去られん老狐の如くに、遅疑しながらも、尚おお勢の身辺を廻って、横眼で睨んでは舌舐りをする(文三は何故か昇の妻となる者は必ず愚で醜い代り、権貴な人を親に持った、身柄の善い婦人とのみ思いこんでいる)。
二葉亭四迷 浮雲 青空文庫
「昨日瓢箪供養に持出して、残った酒をみんな塚へかけてしまったようです」 それを聞くとガラッ八は舌舐りをしました。
瓢箪供養 銭形平次捕物控 青空文庫
そして、暗闇があった所から、染めたくらの髪や舌舐めずりしている喜惣の真赤な口などが、異様にちらつきだしたかと思うと、仔鹿の胴体も、その熱のためにむくむく膨れてきて、たまらない臭気が食道から吹きはじめると、腿の二山の間からも、透き通った、なんとも知れぬ臓腑の先が垂れ下がってきた。
小栗虫太郎 白蟻 青空文庫
いつもの――時江の顔を見ては、妙に舌舐めずりするような気振りなどは、微塵も見られなかったばかりでなく、その全身が、ただ一途の願望だけに、化してしまったのではないかと思われたほど、むしろそれには、人間ばなれのした薄気味悪さがあった。
小栗虫太郎 白蟻 青空文庫
村長は精進落に食ふ腸詰のことを思ひ出して、今からもう舌舐めずりをしてをり、娘つこたちは若者といつしよに氷のうへを辷る時のことを空想してゐた。
VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI ディカーニカ近郷夜話 後篇 青空文庫
軽部の善良な心がいらだちながら慄えているのをそんなにもまざまざと眼前で見せつけられると、私はますます舌舐めずりをして落ちついて来るのである。
横光利一 機械 青空文庫
対岸に堆く積まれていた汚穢物の山は黒く点々と島になり、低い所から濁流は田畑に舌舐めずりしつつ食い入っていた。
金史良 土城廊 青空文庫
が、僕等の祖先の書いた詩文――たとへば凡兆の「木の股のあでやかなりし柳かな」に対するほど、一字一音の末に到るまで舌舐めずりをすることは出来ないのである。
芥川龍之介 文芸的な、余りに文芸的な 青空文庫