蔽物
蔽物
名詞
標準
文例 · 用例
草原の真唯中に、何一つ被蔽物もなく全く無限の大空に向って開放された巣の中には可愛い卵子が五つ、その卵形の大きい方の頂点を上向けて頭を並べている。
— 寺田寅彦 『ゴルフ随行記』 青空文庫
しかも屋根も無く、蔽物とても無ければ、木の葉は自由にその中に沈みて、詩趣に富みたる風情、又譬ふべき者もあらず。
— 田山花袋 『日光山の奧』 青空文庫
日常生活の単調な反復が、いつか積らせた鈍重な塵の底に埋もれていた美が、今、その遮蔽物を掻きのけて光り始めたのであろうか。
— 宮本百合子 『美しき月夜』 青空文庫
九四―九六獸包まれて身を搖動し、包む物またこれとともに動くがゆゑに、願ひを現はさゞるををえざることあり 九七―九九かくの如く、第一の魂は、いかに悦びつゝわが望みに添はんとせしやを、その蔽物によりて我に示しき 一〇〇―一〇二かくていふ。
— LA DIVINA COMMEDIA 『神曲』 青空文庫
生存可能の限界を条件とすれば、遮蔽物もない零下二〇―三〇度の凛烈たる大気の中に、持続的に人間が生活し得るはずがないから、どうしても人夫小屋の中でなければならない。
— 久生十蘭 『海豹島』 青空文庫
この大砲は、炸弾を天頂から落し、大|遮蔽物、あるいはまた、城郭のうしろにいる敵を殺傷するゆえをもって、天砲とも申す」 と、真顔になって註釈したが、そういう一|瞥のうちに、東印度会社の念の入った魂胆を見ぬいてしまったので、外記も、四郎兵衛も、苦笑するばかりで、誰一人、相手にはならなかったのである。
— 久生十蘭 『ひどい煙』 青空文庫
右端の方陣は、掩蔽物がなく最も露出していたので、衝突の初めに早くもほとんど全滅をきたした。
— LES MISERABLES 『レ・ミゼラブル』 青空文庫
三 グランテールの魔睡 実際そこはこの上もない場所であって、街路の入り口は広く、奥は狭まって行き止まりになり、コラント亭はその喉を扼し、モンデトゥール街は左右とも容易にふさぐことができ、攻撃することのできる口はただ、何ら掩蔽物のない正面のサン・ドゥニ街からだけだった。
— LES MISERABLES 『レ・ミゼラブル』 青空文庫