歎
たん
名詞
標準
文例 · 用例
お民は此家に十|年あまり奉公して主人といへど今は我が子に替らず、何とぞ此人を立派に仕あげて我れも世間に誇りたき願ひより、やきもきと氣を揉むほど何心なきお園の体のもどかしく、どうした物と考へ、困つたものと歎き、はては意見に小言を交ぜて或る日さまざま言ひ聞かせぬ。
— 樋口一葉 『經つくゑ』 青空文庫
「たまたま逢ふに切れよとは、仏姿にあり乍ら、お前は鬼か清心様」という歎きは十六夜ひとりの歎きではないであろう。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
そしてまた、時に合宿所の割寢床で、彼が温き夜具の方へ、順番を好都合にしてもらへることを、密かにその神へ歎願した。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
即ちこの種の画家たちは、対象について物の実相を描くのでなく、むしろ主観の幻想や気分やを、情熱的な態度で画布に塗りつけ、詩人のように詠歎したり、絶叫したりしているのである。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
第四章 抽象観念と具象観念1 前章に述べた如く、主観主義の芸術は「観照」でなく、現実の充たされない世界に於て自我の欲情する観念(理念)を掲げ、それへの止みがたい思慕からして、訴え、歎き、哀しみ、怒り、叫ぶところの芸術である。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
支那の詩人は悩ましげにも、「春宵一刻価千金」と歎息している。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
そは快楽への非力な冒険、追えども追えども捉えがたい生の意義への、あらゆる人間の心に通ずる歎息である。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
故に詩を作ることはいつも「祈祷」であり「詠歎」である。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫