上草履
うわぞうり
名詞
標準
indoor sandals
文例 · 用例
身の健かなる夫人は、かえって、かッと上気して眩暈を感じて、扉を閉めながら蹌踉いたが、ばらばら脱ぎ散らした上草履乱れた中に、良人のを見て、取って揃えて直しながら、袖にも襟にも、纏いついて消えもやらぬ霧のまま、急いで旧の欄干口。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
――考えても――上り端には萌黄と赤と上草履をずらりと揃えて、廊下の奥の大広間には洋琴を備えつけた館と思え――彼奴が風体。
— 泉鏡花 『浮舟』 青空文庫
そこらを見廻しても、上草履のやうなものも無かつたし、私は、工場の門口に立つて、ただ、にやにや、笑つてゐた。
— 太宰治 『津軽』 青空文庫
ト今夜もばたばたと、上草履の音に連れて、下階の病室を済ました後、横田の田畝を左に見て、右に停車場を望んで、この向は天気が好いと、雲に連なって海が見える、その二階へ、雪洞を手にした、白衣の看護婦を従えて、真中に院長夫人。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
いたいたしいと言えば、それがね、素足に上草履。
— 泉鏡花 『唄立山心中一曲』 青空文庫
あの、旅店で廊下を穿かせる赤い端緒の立ったやつで――しっとりとちと沈んだくらい落着いた婦なんだが、実際その、心も空になるほど気の揉めるわけがあって――思い掛けず降出した雪に、足駄でなし、草鞋でなし、中ぶらりに右のつッかけ穿で、ストンと落ちるように、旅館から、上草履で出たと見えます。
— 泉鏡花 『唄立山心中一曲』 青空文庫
千代子は縁がはをばた/\と上草履の音をさせて、こちらの室へ駈けて來て、障子の敷居のうへへ片足をかけたまま首を机の方へ突き出し、聲を低めて、「やつて來ましたよ――紀州の女が。
— 發展 『泡鳴五部作』 青空文庫
足が、障子の合せ目に揃えて脱いだ上草履にかかった……当ったのです。
— 泉鏡花 『菊あわせ』 青空文庫