這い
はい
名詞
標準
文例 · 用例
危き橋をようように這いわたりて終に下り着くに滝のしぶき一面に雨の如く足もとより逆に吹きあぐるさますさまじく恐ろしく暫くも彳みかねつ。
— 伊藤左千夫 『滝見の旅』 青空文庫
狭き庭の中垣ともいわず手水鉢ともいわず朝顔を這いつかせたり。
— 伊藤左千夫 『草花日記』 青空文庫
絶壁の下なる大深谷からは、霧がすさまじいいきおいで、皺嗄れ声を振り立てて上って来る、近づくほど早くなるかと思うと、端から砕けてサアッと水球を浴びせる、そうして呻りながら、尾根につかまり、槍先へ這いずり上って、犠牲になる生霊もがなと、捜し廻っている。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
焚火の烟は、油紙の屋根の継ぎ目から洩れて、白い柱が立っては崩れ、風に折れて地を這いながら、谷中を転げてゆく。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
早く穴の中から這い出したい。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
稜角の端まで這い出して、小さい阜――古代の動物の骨のようにゴロゴロ転がっている石の堆積――の上に立った、石はビッショリと濡れて、草鞋が辷る。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
羚羊・長之助草(北岳の絶巓に登る記) それから尾根伝いに、間の岳の絶頂まで這い上り、三等三角測量標の下に立った、北西に駒ヶ岳(甲斐)の白い頭が、眼前の鋭い三稜形をしている北岳に、挟みつけられて見える、霧が来て散った。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
一同は狂気のように躍り上って、悦んだ、そうして小さい谷川へ下りたときには、敷石の水成岩の上に、腹這いになって、飲む、嗽ぐ、洗う、もう浸かるばかりにして、やっと満腹した。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫