陰膳
かげぜん
名詞
標準
tray for absent one
文例 · 用例
読者知るや、さんが、オムレツを啣んで、あゝ、うまい、と嘆じ、冴返る身に沁々とほつき貝と、芥川さんが詠じて以来、――東京府の心ある女連は、東北へ旅行する亭主の為に鰹のでんぶと、焼海苔と、梅干と、氷砂糖を調へることを、陰膳とゝもに忘れない事に成つた。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
明日は御前様御誕生日に当り申候へば、わざと陰膳を供へ候て、私事も共に御祝ひ可申上、嬉きやうにも悲きやうにも存候。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
――母親がお茶を立てながら俺に陰膳を供えていてくれるころだ。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
仏壇には、いつも、灯が新らしく、そして、陰膳が美しく――ただ、その中に一つ、気味の悪いのは、薄絹の上の紙の中にある、髪の切ったものであった。
— 直木三十五 『寛永武道鑑』 青空文庫
源三郎に陰膳すえて、道場方とにらみ合い――ふしぎな生活がつづいている。
— 日光の巻 『丹下左膳』 青空文庫
家では佐太郎の陰膳を据えることを、初世は毎日朝晩欠かしたことがなかつた。
— 伊藤永之介 『押しかけ女房』 青空文庫
自分の陰膳の据えられた仏壇を拝んでから爐ばたの足高膳の前に坐つた佐太郎は、五年ぶりのドブロクの盃を三つ四つ、重ねるうちに、もういい加減酔つてしまつた。
— 伊藤永之介 『押しかけ女房』 青空文庫
台所の蠅入らずの上に、陰膳をそなえていたときのまま直次の写真が飾られている。
— 宮本百合子 『播州平野』 青空文庫
作例 · 標準
海外に単身赴任中の夫の無事を祈り、毎朝陰膳を据えている。
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遠く離れて暮らす息子のために、母は誕生日になると陰膳を用意した。
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昔の人は、旅に出た家族の帰りを待つ間、陰膳を欠かさなかったという。
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