菲
菲
名詞
標準
文例 · 用例
ジッドは『狭き門』を読んだ切りで、純情な青年の恋物語であり、シンセリティの尊さを感じたくらいで、……とにかく、浅学|菲才の僕であります。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
私はただ自分の菲才を知っているから、人よりはすくなく寝て、そして人よりは多くの金を作品のために使い、作品がかせぎ出した金は一銭も残そうとしなかっただけだ。
— 織田作之助 『私の文学』 青空文庫
貧窮、病弱、菲才、双肩を圧し来って、ややもすれば我れをして後えに瞠若たらしめんとすといえども、我れあえて心裡の牙兵を叱咤して死戦することを恐れじ。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
余は指を折つて、余が留学期の長短を考へまた余の菲才を以て、期限内に如何ほどか上達し得べきかを考へたり。
— 夏目漱石 『『文学論』序』 青空文庫
レオ・アフリカヌスがナイル河のに食わるとし(一八九〇年版アントニオ・デ・モルガ『菲列賓諸島誌』二七三頁)、一六八三年版マリア法師の『東方遊記』四一五頁にいう、マラバルの証真寺に池あり、多くこれを免し偽なれば必ずを制し己をを城溝に養い、罪人あらば与うるに、三日まで食わねば無罪として放免すと見ゆ。
— 田原藤太竜宮入りの話 『十二支考』 青空文庫
「いよ/\となれば――」 創作家であるべき自分の胸の底には、斯ほどにも菲薄な望みが、動物的な眼を視張つてゐたのだ。
— 牧野信一 『冬の風鈴』 青空文庫
そして、そんな場合には、終ひには知らず識らず走る、己れの菲薄性を宿命的に踏みつけるやうな妄想に駆られて、極めて漠然と業を煮やすのであつた。
— 牧野信一 『蔭ひなた』 青空文庫
その中には一時大阪で盛んに人気を湧かして弦斎以後の全盛を極めた渡辺霞亭の旧名朝霞や、不幸にして早世して今では殆んど忘れられた慶応出身の小説家|井上笠園や、達摩の蒐集家として奇名隠れなかった理学士西芳菲山人の名が見える。
— ――尾崎紅葉―― 『硯友社の勃興と道程』 青空文庫