閑かさ
しずかさ
名詞
標準
文例 · 用例
あしの根に近づくと、またこの長汀、風さわやかに吹通して、人影のないもの閑かさ。
— 泉鏡太郎 『木菟俗見』 青空文庫
柔かさ、かがやかさ、尾は立てぬ、斑雪矢羽根、鳩なり、よき紫、閑かさや、そのかたち、水の輪の紋織や、嘴を、嘴を、嘴をふれ、聴くともなし、春雷。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
外は飛沫が凄まじいが、三四五六丁の此方はまたとろりとした一面の閑かさで、腐れたようにも濁っている。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
その老婆の枕のうえには、私は見て虔ましくなった、金の十六弁の菊の御紋章が光り、今上皇后両陛下に摂政宮と妃殿下の御尊像が並び立たせられた石版刷りの軸が一本、まことにありがたそうに掛け垂らしてあった、そのそよともせぬ閑かさ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
長閑かさを抑えつけたる頭の上は、晴るるようで何となく欝陶しい。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
彼の有名なる『閑かさや岩にしみ入る蝉の聲』の句は、翁が山寺にて作りたる也。
— 大町桂月 『遊羽雜感』 青空文庫
それは春の日のことで、霞める浦輪には、寄せる白波のざわざわという音ばかり、磯の小貝は花のように光っている閑かさだった。
— 長谷川時雨 『田沢稲船』 青空文庫
窓越しに見ると、莟のふくらみかけた大木の丁子の枝遷りして、わが世の春の閑かさ暖かさをこの時に萃めているように。
— 金子薫園 『松園女史の思い出』 青空文庫