鎖し
とざし
名詞
標準
文例 · 用例
用心口を鎖してお寢間へ戻り給ひしが再度立つてお菓子戸棚のびすけつとの瓶とり出し、お鼻紙の上へ明けて押ひねり、雪灯を片手に縁へ出れば天井の鼠がた/\と荒れて、鼬にても入りしかきゝといふ聲もの凄し。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
窓硝子を堅く鎖してしまつた手術室の中は、夏の午後のむれ返るやうな熱氣で、息が抑へられるやうだつた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
のみならず神に對して祈る聲は持つてゐても、人に對しては聲を鎖してゐる。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
その單調に鎖した空氣の中に二人の靴音が高く聞えた。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
死が自分の眼を鎖して人間としてのあらゆる意識を消してくれる時でなければ……」自分の心が次第に暗い處へ引き摺られて行くやうな寂しさを感じながら、私は無意識に歩いてゐた。
— 南部修太郎 『修道院の秋』 青空文庫
袂に縋って、牲の鳥の乱れ姿や、羽掻を傷めた袖を悩んで、塒のような戸を潜ると、跣足で下りて、小使、カタリと後を鎖し、「病人が冷くなったい。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
蝕あり、変あり、兵あり、乱ある、魔に囲まれた今日の、日の城の黒雲を穿った抜穴の岩に、足がかりを刻んだ様な、久能の石段の下へ着くと、茶店は皆ひしひしと真夜中のごとく戸を鎖して、蜻蛉も飛ばず。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
あはよく峠に戸を鎖した一|軒の山家の軒に辿り着いた。
— 泉鏡花 『雪の翼』 青空文庫