表町
おもてまち
名詞
標準
文例 · 用例
一樹が立留まって、繁った樫の陰に、表町の淡い燈にすかしながら、その「――干鯛かいらいし――……蛸とくあのくたら――」を言ったのである。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
みな表町なる大通の富有の家に飼われしなりき。
— 泉鏡花 『照葉狂言』 青空文庫
三人が行き過ぐるや自分は舌打して起ちあがり、そこそこと山を下りて表町に出た。
— 国木田独歩 『酒中日記』 青空文庫
「なんだか表町の方では変な噂をしているようですが……」「へえ、そうでございますか」 お初の顔色がまた変った。
— 猫騒動 『半七捕物帳』 青空文庫
町並で山下通りの電車線路の近くは、表町通りの熾烈なネオンの光りを受け、まるで火事の余焔を浴びているようである。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
又或晩のことでした、十時頃僕は表町から一木町辺に散歩に出ると此日は、何かの祭日で軒提灯が門並に点いて居て随分きらびやかでしたが、時が遅いので人の出は余程減つて居ました。
— 國木田獨歩 『夜の赤坂』 青空文庫
僕は一木町と表町の丁字形になつて居る処まで来ると、理髪店の前に大さう人が集まつて居ます。
— 國木田獨歩 『夜の赤坂』 青空文庫
この夜も月で、やゝ西に傾いた光が表町の広い道の三分の二をくつきりと白く照らし三分一は南の家並で黒く陰つて居ました、僕の立て居た処は此黒い影の中であるから、向を見て居ると恰度幻灯を見て居るやうです。
— 國木田獨歩 『夜の赤坂』 青空文庫