成心
せいしん
名詞
標準
文例 · 用例
批評でも書いてみようという成心を持っていない、通り一遍の観覧者の多数は、おそらくこういう感じを抱いて洋画の方へ移って行くに相違ない。
— 寺田寅彦 『帝展を見ざるの記』 青空文庫
それは單に感じに止まつてゐたのであつて、何らの成心も必然其處に働いてゐたのではない樣であるが、私は其處に人間が自分の卑しさを庇はふとする意志が、感ぜられないながらも働いてゐるのではないかと思ふ。
— 梶井基次郎 『奎吉』 青空文庫
サ行の音が多いにちがいないと思ったりする、その成心に妨げられたのです。
— ――或る私信―― 『橡の花』 青空文庫
尤も、その時はAも表面で全く成心なさそうに振舞ったが、併し家へ帰ると、二人ともそのことを内秘にしていた。
— ――夫婦哲学―― 『花嫁の訂正』 青空文庫
けれども、彼には今決して少しばかりも成心があるのではなかつた。
— 水野仙子 『醉ひたる商人』 青空文庫
それに彼らの立場は、ただ他の暗黒面を観察するだけで、自分と堕落してかかる危険性を帯びる必要がないから、なおの事都合がいいには相違ないが、いかんせんその目的がすでに罪悪の暴露にあるのだから、あらかじめ人を陥れようとする成心の上に打ち立てられた職業である。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
おのれも亦伯が当時の免官の理由を知れるが故に、強て其成心を動かさんとはせず、伯が心中にて曲庇者なりなんど思はれんは、朋友に利なく、おのれに損あればなり。
— 森鴎外 『舞姫』 青空文庫
まことや成心は悟の道の稻麻竹葦にして、學の路の荊棘なれば、誰かはこれを破り、これを除かむことを欲せざらむ。
— 森鴎外 『柵草紙の山房論文』 青空文庫