託
託
名詞
標準
文例 · 用例
ものに屈託するなどいうことはとんと知らなかった糟谷も、にわかに悔恨の念禁じがたく、しばしば寝られない夜もあった。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
「粋と云はれて浮いた同士」が「つひ岡惚の浮気から」いつしか恬淡洒脱の心を失って行った場合には「またいとしさが弥増して、深く鳴子の野暮らしい」ことを託たねばならない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
それに反して、主観的芸術は具体的な「いき」を内容として取扱う可能性を多くもたないために、抽象的な形式そのものに表現の全責任を託し、その結果、「いき」の芸術形式はかえって鮮やかな形をもって表われてくるのである。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
多くの一般の俳句は、自然の風物に託して主観の情調や気分を詠じているので、純に観照のために観照をしている如き、没情感の冷たい俳句と言うものは見たことがない。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
それで妻の屈託を慰めようとし、夫人に向って度々外出や遊山をすすめた。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
海事局だって、俺の言い分なんか聞かねえ事あ、手前や船長が御託を並べるまでも無えこっちで知ってらあ。
— 葉山嘉樹 『浚渫船』 青空文庫
その金が本人退職後もなお会社に残っていたとすれば、明らかに委託金横領ではないか、その金が支払われるのが、いつも最後の例だからって、その金を受け取ることによって、辞職を意味するなんて、そんな詭弁が、よくも人事係の君の口から吐けたもんだ。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
そして、船長などというのもいかがわしいのが多く、これらの船員と結託しては密航婦を、シンガポーアだとか、ホンコンだとか、またはアントワープだとかの遠方までも、大仕掛けで輸送したものだ。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫