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戦々

せんせん
名詞
1
標準
文例 · 用例
岩見武勇伝に出て来る鎮守の神――その正体は狒々である――の生贄として、白羽の矢を立てられはせぬかと、戦々|兢々たる娘、及び娘を持てる親たちのような恐れと、哀れとを、水夫たちは一様に感じた。
葉山嘉樹 海に生くる人々 青空文庫
恐らく講師の私を大いに学のある男だと思ったらしかったが、しかし、私は講演しながら、アラビヤに沙漠があったかどうか、あるいはまた、アラビヤに猿が棲んでいたかどうかという点については、甚だ曖昧で、質問という声が出ないかと戦々兢々としていたのである。
織田作之助 可能性の文学 青空文庫
予は万々|然ることのあるべからざる理をもて説諭すれども、渠は常に戦々兢々として楽まざりしを、密かに持余せしが、今|眼前一本杉の五寸釘を見るに及びて予は思半ばに過ぎたり。
泉鏡花 黒壁 青空文庫
宮中に育って、自由らしいことは何一つできずに、ただ過失らしいことが一つあるだけでも世間はやかましく批難するだろうと戦々兢々としていた青年の私でも、やはり恋愛をあさる男のように言われて悪く思われたものなのだ。
梅が枝 源氏物語 青空文庫
『君の知る知らないで、戦々恐々だ。
THE "GLORIA SCOTT" グローリア・スコット号 青空文庫
」などと口では言っている癖に、実際はその享楽家的な外貌の下に戦々兢々として薄氷を履むような思いの潜んでいることを、俺は確かに見抜いたのだ。
―沙門悟浄の手記― 悟浄歎異 青空文庫
それは榎本君からかねて言い聞かされているので、わたしは戦々兢々として老人の眼色をうかがっていたが、それでも時々に叱られた。
岡本綺堂 明治劇談 ランプの下にて 青空文庫
すると余の傍に立っていた是公が何と思ったものか、急にどうだ、あの樹を見ろ、戦々兢々としているじゃないかと云った。
夏目漱石 満韓ところどころ 青空文庫