泥色
どろいろ
名詞
標準
文例 · 用例
その音が自分の頭から体を真二つに引き裂くように感じて鈴子は思わず顔が赤くなり、幾分ゆるめていた体を引き締め、開きめの両膝をぴったりと付ける、とたんにもくもくと眼近くの堀の底から濁りが起ってボラのような泥色の魚がすっと通り過ぎた。
— 岡本かの子 『晩春』 青空文庫
泥色をした浅草紙を型にたたきつけ布海苔で堅めた表面へ胡粉を塗り絵の具をつけた至って粗末な仮面である。
— 寺田寅彦 『自由画稿』 青空文庫
間もなく、足萎の老人は四輪車を駆ってやって来たが、以前の生気はどこへやらで、先刻うけた呵責のため顔は泥色に浮腫んでいて、まるで別人としか思われぬような憔悴れ方だった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
杏丸は、まるで浮腫でもあるような、泥色の黄ばんだ皮膚をしていて、見るからに沈欝な人相だった。
— 小栗虫太郎 『失楽園殺人事件』 青空文庫
(十四) 我が四畳半 (五) 我が絳泥色の帽子も亦、この壁上にあり。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
嘗て美しかりしコゲ茶色は、今何故に斯くも黯然たる絳泥色に変色したりや。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
黄泥色の濁りに底うなりを立てて蠢動して行った。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
たとひ赤茶けた泥色にもせよ、廣々とした海の景色を前にすると、みんなもうはしやぎきつて、勝手なおしやべりを始めてゐる。
— 林芙美子 『ボルネオ ダイヤ』 青空文庫