躍然
躍然
名詞
標準
文例 · 用例
あれはと見る間に百尺波状の黒線の左右より、二条の砂煙真白にぱツと立つたれば、その尾のあたりは埃にかくれて、躍然として擡げたるその臼の如き頭のみ坂の上り尽くる処雲の如き大銀杏の梢とならびて、見るがうちに、またただ七色の道路のみ、獅子の背のみ眺められて、蜈蚣は眼界を去り候。
— 泉鏡花 『凱旋祭』 青空文庫
言葉で現わされない人間の真相が躍然としてスクリーンの上に動いて観客の肺腑に焼き付くのであった。
— 寺田寅彦 『ニュース映画と新聞記事』 青空文庫
遠慮なく持ってまいれ」 さし出された手札を見ると、この者の命令は予が命令と思うべし、松平伊豆守――と大きく書かれてあったものでしたから、まったくもう右門は鬼に金棒で、躍然としながら城中を辞し去りました。
— 血染めの手形 『右門捕物帖』 青空文庫
脈々三千条の血管を越す、若き血潮の、寄せ来る心臓の扉は、恋と開き恋と閉じて、動かざる男女を、躍然と大空裏に描き出している。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
第一義は血を見ないと出て来ない」「それこそ危険だ」「血でもってふざけた了見を洗った時に、第一義が躍然とあらわれる。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
メリメのカルメンはカルメンと云う女性を描いて躍然たらしめている。
— 夏目漱石 『作物の批評』 青空文庫
黄雲の如き土塵をものともせず、我も亦躍然として人々と共に一群の先鋒に銅羅声をあげたりき、これこの古帽先生が其満腔の愛国心を発表しえたる唯一の機会なりし也。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
『海へ』はモウパツサンの『水の上』ほど焦々した気分は出てゐなかつたけれども、又平面な描写の中にをり/\入り込んで来る追憶が、十分な効果を挙げるのをさまたげたが、しかし落附いた気分と美しい情緒とは、筆の上に躍然としてあらはれてゐた。
— 田山録弥 『自他の融合』 青空文庫