霎時
霎時
名詞
標準
文例 · 用例
霎時にして海上を見渡せば、日は已に没し、海波暗くして怒濤砂を捲き、遥か沖合には漁火二、三。
— 井沢衣水 『本州横断 痛快徒歩旅行』 青空文庫
「チュッ、チュッ、チュ、チュ」 雀の声が一霎時の閑寂の中に投入れられた。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
霎時ありて、姫は詞の過ぎたるを悔み給ひしにや、面に紅を潮して我手を取り、アントニオとても我心の平和を破り、我に要なき物思せさせんとにはあらざるべしと宣給ふ。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
この「石が降る」という事は往々聞く所だが、必らずしも雨霰の如くに小歇なくバラバラ降るのではなく何処よりとも知らず時々にバラリバラリと三個四個飛び落ちて霎時歇み、また少しく時を経て思い出したようにバラリバラリと落ちる。
— 岡本綺堂 『池袋の怪』 青空文庫
汝れ化物、再び姿を現わさば真二つと、刀の柄に手をかけて霎時の間、闇き水中を睨み詰めていたが、ただ渦巻落つる水の音のみで、その後は更に音の沙汰もない。
— 岡本綺堂 『河童小僧』 青空文庫
序にここを通ったらば、霎時この海岸に立って、諸君が祖先の労苦を忍んでもらいたい。
— 岡本綺堂 『一日一筆』 青空文庫
お政は霎時考えて、「いいえ、別に都合の悪いと云うこともありませんが……。
— 岡本綺堂 『飛騨の怪談』 青空文庫
この時、敵は血に染みたる洋刃を揮って、更に市郎を目がけて飛び蒐って来たが、其の眼前に恰も燐寸の火が溌と燃ゆるや、彼は電気に打たれたように、猝に刃物をからりと落して、両手で顔を掩ったまま、霎時そこに立縮んで了った。
— 岡本綺堂 『飛騨の怪談』 青空文庫