去秋
きょしゅう
名詞
標準
文例 · 用例
八丁堀、加役のたぐいであることは言うまでもあるまい」「役人に似た侍が追いおとし――コウッと、待てよ……」 首をひねった泰軒、即座に思い起こしたのは去秋お蔵前正覚寺門まえにおける白昼の出来ごと!
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
もう一枚の単衣の方はさし当り、去秋(九月中旬)お送りしてかえらず、そちらにあるメイセン絣ペナペナだけれども、今ごろジュバンの上へお着になれます、どうぞそれを着ていらして下さい。
— 一九四三年(昭和十八年) 『獄中への手紙』 青空文庫
去秋以後收入なきにあらねど、そは戰爭中徒然のあまり筆とりし草稿、幸にして燒けざりしを售りしが爲なり。
— 永井荷風 『荷風戰後日歴 第一』 青空文庫
詩仏に従って詩を学んだ品川正徳寺の住職密乗上人がその郷友に寄せた書簡に「天民翁去秋より病気に御座候処春来度々吐血等|被致、即当二月十一日暁|寅の刻|物故被致、昨十三日午時浅草光感寺と申す浄家の寺に葬す。
— 永井荷風 『下谷叢話』 青空文庫
しかも去秋の小豆は一粒として傷んでいず、去秋の美事な近年にない豊作のあらわれが、この小豆にさえ見られた。
— 室生犀星 『津の国人』 青空文庫
去秋、町方から来て以来、過失もなく、どこかに聡明をかくれて持ったようだが、上べには、それが見られなかった。
— 室生犀星 『野に臥す者』 青空文庫