鐚一文
びたいちもん
名詞
標準
文例 · 用例
況してたゞで死んだものならそれこそ鐚一文にだつてなりやしない。
— 葉山嘉樹 『工場の窓より』 青空文庫
「郷票をかっぱらうんなら、まだ分るが、鐚一文もない軟派の娘をかっぱらってどうするんだい。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
競争に負けたジャップには鐚一文だって有りゃしないんだろう。
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫
「あたし、何にも知らないけれど、あんた、この頃でもうちの父に、何かお金のことで面倒を見ているの」「いや、金はもう、老先生には鐚一文出しません。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
汗と脂がアバタの穴についたその寝顔は、いかにも醜悪であったから、木鼠胴六は、「何てきたねえアバタ面だ」 と、ペッペッと唾を吐き散らし、わざとらしく嘔吐を催した振りをしながら、佐助の懐中をさぐったが、鐚一文も出て来なかったので、呆れかえってしまった。
— 織田作之助 『猿飛佐助』 青空文庫
あとはお前鐚一文送って来ん、あとに残った二人がどないして食べて行けるねん?
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
帰って来ての話に、無心したところ、妹婿が出て応待したが、訳のわからぬ頑固者の上に、いずれはこの家の財産は養子の自分のものと思ってか随分けちんぼと来ていて、結局鐚一文も出さなかった――と、柳吉はしきりに興奮した。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
おまけに、相手が寿子の演奏会やレコード吹き込みの話を持ち出すと、庄之助は自分から演奏料の金額を言い出して、「鐚一文かけても御免蒙りましょう」 と、一歩も譲らなかった。
— 織田作之助 『道なき道』 青空文庫