漣
さざなみ
名詞
標準
文例 · 用例
油紙の天幕には、チロチロと漣の刻むような光りがする、岩石の間に、先刻捨てた尻拭き紙までが、真赤にメラメラと燃えている、この窪地一帯に散乱する岩石の切れ屑は、柔らかく圭角を円められて、赤い天鵝絨色が潮しはじめた。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
次に雪の面は、必ずしも板のように平面でなく、風の吹き荒れたままに漣波状をして、湖水のおもてに尖波が立ったような状能になり、そのまま凝っているのがある、また円い輪が幾つも列なって、同心円が出来ているのもある。
— 小島烏水 『高山の雪』 青空文庫
ここで若い靴磨きが変な街路詩人の詩を口ずさみ三等席の頭上あたりの宵の明星を指さして夕刊娘の淡い恋心にささやかな漣を立てる。
— 寺田寅彦 『初冬の日記から』 青空文庫
漣一つ立たない池に映つた丘の森の色も又なく美しいものである。
— 寺田寅彦 『寫生紀行』 青空文庫
一処、大池があって、朱塗の船の、漣に、浮いた汀に、盛装した妙齢の派手な女が、番の鴛鴦の宿るように目に留った。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
平に一夜、御住居の筵一枚を貸したまわれ……」 ――旅僧はその時、南無仏と唱えながら、漣のごとき杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで一揖したのであった。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
あまつさえ、水底に主が棲む……その逸するのを封ずるために、雲に結えて鉄の網を張り詰めたように、百千の細な影が、漣立って、ふらふらと数知れず、薄黒く池の中に浮いたのは、亀の池の名に負える、水に充満た亀なのであった。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
草鞋の足痕にたまった泥水にすら寒そうな漣が立っている。
— 国木田独歩 『忘れえぬ人々』 青空文庫