髪乱
かみらん
名詞
標準
文例 · 用例
(自分を制せず、魔に魅入られたるもののごとく、踊りかかり、飛び上り、髪乱れ、色あおざむ。
— 泉鏡花 『山吹』 青空文庫
朝の光が涼しい風と共に流れ込んで、髪乱れ、眼|凹み、皮膚の沢なく弛んだ智恵子の顔が、モウ一週間も其余も病んでゐたものの様に見えた。
— 石川啄木 『鳥影』 青空文庫
今は何条猶予すべき、直ぐに偉容を張って謡い了ったが、我れながら会心の出来で、殊に、「乱れ髪乱れ笠、思いはいつか忘れむと」 のあたり、即座に天関地軸を撲落して、唯一人の美人を天の一方に仰ぐような心地がした。
— 夢野久作 『謡曲黒白談』 青空文庫
春につぎ夏来ると云ふ暇無さ黒髪乱し男と語る 晶子さんの秀歌の中には、同じ程の本分のある人なら作れさうな歌も少くはない。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
一首の意は恋愛三昧に日もこれ足りないのであらうが、ヰインの女のそれのやうに心易いものでなく、相当深刻なものであることは黒髪乱しが語つてゐる。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
髪乱し人来て泣きぬうらがなし豆の巻き髭黄に枯るゝ頃 女友達が訴へに来たが、心の乱れが髪の乱れにもあらはれて、しきりに泣くので私も悲しくなつた。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
織江であろう白鉢巻、白襷した小さい体が、靡きつ揺れつ髪乱れるように、騒立つ芒の原の中を、前後左右によろめいている。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
その声に応じて大勢駆けつけ、これを熟視するに、眉、目、鼻、口等、確かに描きしごとくそなわって、その頭部には毛髪乱れたるなど、いかにも奇怪に現れた。
— 井上円了 『おばけの正体』 青空文庫