切り子
きりこ
名詞
標準
facet
文例 · 用例
そのバタというものの名前さえも知らず、きれいな切り子ガラスの小さな壺にはいった妙な黄色い蝋のようなものを、象牙の耳かきのようなものでしゃくい出してパンになすりつけて食っているのを、隣席からさもしい好奇の目を見張っていたくらいである。
— 寺田寅彦 『コーヒー哲学序説』 青空文庫
(昭和五年七月、渋柿) * 純白な卓布の上に、規則正しく並べられた銀器のいろいろ、切り子ガラスの花瓶に投げ込まれた紅白のカーネーション、皿の上のトマトの紅とサラドの緑、頭上に回転する扇風機の羽ばたき、高い窓を飾る涼しげなカーテン。
— 寺田寅彦 『柿の種』 青空文庫
切り子ガラスの灰皿は、吸いがらであふれそうになっているし、なによりも、いつも身だしなみにうるさい寮長の顔に、不精髭が浮いていたのに、慶一はおどろいた。
— 第2章 メリーゴーラウンド、1967年 『45回転の夏』 青空文庫
机にかける布切り子やセルロイドの筆立て、万年ペンのクリップ、風呂敷、靴にまで現われている趣味を通じて、その子女が世紀末的思想から生れた頽廃趣味に陥っていることを見破り得る親は先ずあるまい。
— 夢野久作 『東京人の堕落時代』 青空文庫
岩をくり抜いて作った、幾つかの部屋部屋には、壁に、斜め市松の切り子ガラスなど、はめられているけれども、総じて無装飾な、真っ黒にくすぶり切った、椅子や曲木の寝床などが散在しているにすぎなかった。
— 小栗虫太郎 『紅毛傾城』 青空文庫
管玉の次ぎにたくさん出るものに、切り子玉といふのがあります。
— 濱田青陵 『博物館』 青空文庫
集成館には維新前にすでに島津家に輸入されてゐた十八呎の旋盤や、紡績機械や、またここで作られた極めて上品な切り子の硝子や、所謂古代薩摩焼などを見た。
— 吉田絃二郎 『八月の霧島』 青空文庫
で男を切り女を切り馬を切り子供を切り、切れば切るほど宿が恐怖し、宿が混乱するその事が、面白くて面白くてならないのであった。
— 国枝史郎 『剣侠』 青空文庫