空裏
くうり
名詞
標準
文例 · 用例
やがて麗姫は何もかも忘れてしまって自分の興そのものだけを空裏に飛躍させ始めた。
— 岡本かの子 『荘子』 青空文庫
今かりに大弾丸の空裏を飛ぶ様を写すとする。
— 夏目漱石 『文芸の哲学的基礎』 青空文庫
脈々三千条の血管を越す、若き血潮の、寄せ来る心臓の扉は、恋と開き恋と閉じて、動かざる男女を、躍然と大空裏に描き出している。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
怒の中心より画き去る円は飛ぶがごとくに速かに、恋の中心より振り来る円周は※の痕を空裏に焼く。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
引き付けられたる鉄と磁石の、自然に引き付けられたれば咎も恐れず、世を憚りの関一重あなたへ越せば、生涯の落ち付はあるべしと念じたるに、引き寄せたる磁石は火打石と化して、吸われし鉄は無限の空裏を冥府へ隕つる。
— 夏目漱石 『薤露行』 青空文庫
余は石甃の上に立って、このおとなしい花が累々とどこまでも空裏に蔓る様を見上げて、しばらく茫然としていた。
— 夏目漱石 『草枕』 青空文庫
しんしんとして、木蓮は幾朶の雲華を空裏に寥たる春夜の真中に、和尚ははたと掌を拍つ。
— 夏目漱石 『草枕』 青空文庫
三度目に敲いた音が、物静かな夜を四方に破ったとき、偶像の如きウィリアムは氷盤を空裏に撃砕する如く一時に吾に返った。
— 夏目漱石 『幻影の盾』 青空文庫