空鉄砲
からでっぽう
名詞
標準
文例 · 用例
――空鉄砲の機会もなしに、五斗兵衛むっくと起きて、思入があったがね。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
ためしに空鉄砲を放してみよう」といって、井上某が鉄砲を取りに立とうとすると、ぽかりと切石が眉間に当たって倒れました。
— 岡本綺堂 『江戸の化物』 青空文庫
又九郎は汝れ斬りやアがったなと空鉄砲を持って永禪和尚に打って掛るを引っ外して、永「猪口才な事をするな」 と肩先深く斬下げました。
— 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 青空文庫
確かチャリネの前かスリエという曲馬が――明治五年でしたか――興行された時に、何でもジョーワニという大砲を担いで、空砲を打つという曲芸がありまして、その時|空鉄砲の音に驚かされて、奥山の鳩が一羽もいなくなった事がありました。
— ――浅草奥山の草分―― 『諸国の玩具』 青空文庫
「うすゆきものがたり」の筆者は、「筒先に音あって、むかうに声なきは、空鉄砲なりしにや」と婉曲に言いまわしているが、いったい誰が鉄砲から弾丸を抜いておいたか、それくらいのことが道益にわからないわけはないから、あまり機略に富んだ娘も困ったものだと、さぞや味気ない思いをしたことだったろう。
— 久生十蘭 『うすゆき抄』 青空文庫
八、筒に声あって向うに声なきは多分|空鉄砲。
— 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻―― 『ノンシャラン道中記』 青空文庫
果物をつつきに群れる鳥を追うため、空鉄砲を放つことは、許されているのである。
— 火野葦平 『花と龍』 青空文庫
……そして秋になると、幾十|疋もの野猿の群が、柿を盗みに屋敷の中へやって来た、その土地では猿を殺さない習慣なので、威しの空鉄砲で追い払うのだが、猿たちが盗みとった柿を片手に抱えて、けたたましく叫び交しながら逃げて行くさまは面白いみものだった。
— 山本周五郎 『春いくたび』 青空文庫