荐
荐
名詞
標準
文例 · 用例
と見れば後の小舎の前で、昇が磬折という風に腰を屈めて、其処に鵠立でいた洋装紳士の背に向ッて荐りに礼拝していた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
昇は荐りに点頭いて、「運動会」「そのうんどうかいとか蕎麦買いとかをするからもう五十銭くれろッてネ、明日取りにお出でと云ッても何と云ッても聞かずに持ッて往きましたがネ。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
「若しまた無礼を加えたら、モウその時は破れかぶれ」ト思えば荐りに胸が浪だつ。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
アラ厭ですよ……アラー御新造さアん引」 ト大声を揚げさせての騒動、ドタバタと云う足音も聞えた、オホホホと云う笑声も聞えた、お勢の荐りに「引掻てお遣りよ、引掻て」ト叫喚く声もまた聞えた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
ちらほら梅の咲きそうな裏庭へ出て、冷い頸元にそばえる軽い風に吹かれていると、お島は荐に都の空が恋しく想出された。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
これは無論親父には内証だつたのだが、当座は荐つて帰りたがつた娘が、後には親父の方から帰れ帰れ言つても、帰らんだらう。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
十八世紀の始め頃欧州で虚栄に満ちた若い婦女が力なき老衰人に嫁する事|荐りなりしを慨し、閹人の種類をことごとく挙げて、陽精|涸渇した男に嫁するは閹人の妻たるに等しく何の楽しみもなければ、それより生ずる道徳の頽敗寒心すべきもの多しとて、広く娶入り盛りの女や、その両親に諭した親切至れる訓誡の書だ。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
「ではすみませんが、拝借いたしましょうか、私の家は荐橋の双茶坊でございます」 女は細そりした長い指を柄にからませた。
— 田中貢太郎 『雷峯塔物語』 青空文庫