温柔
おんじゅう
名詞
標準
文例 · 用例
そして今彼に対面する者は、彼をただ友人とのみ考へるなら、余りに肉親的な彼の温柔性に辟易しなければならない破目になるだらう。
— 中原中也 『夭折した富永』 青空文庫
人の親の、其児に教ふるに愛を以てせずして漫に恭謙、貞淑、温柔をのみこれこととするは何ぞや。
— 泉鏡花 『愛と婚姻』 青空文庫
十一 妙子の手は、矢車の花の色に際立って、温柔な葉の中に、枝をちょいと持替えながら、「こんなものを持っていますから、こちらから、」 とまごつくお源に気の毒そう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
車を彩る青葉の緑、鼈甲の中指に影が透く艶やかな円髷で、誰にも似ない瓜核顔、気高く颯と乗出した処は、きりりとして、しかも優しく、媚かず温柔して、河野一族第一の品。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
優雅、温柔でおいでなさる、心弱い女性は、さような狼藉にも、人中の身を恥じて、端なく声をお立てにならないのだと存じました。
— 泉鏡花 『革鞄の怪』 青空文庫
「あんたは温柔しいな」と女は言った。
— 梶井基次郎 『ある心の風景』 青空文庫
男の子で温柔しくしているのもあった。
— 梶井基次郎 『冬の日』 青空文庫
葉子はしかし、いつでも手ぎわよくその場合場合をあやつって、それから甘い歓語を引き出すだけの機才を持ち合わしていたので、この一か月ほど見知らぬ人の間に立ちまじって、貧乏の屈辱を存分になめ尽くした木村は、見る見る温柔な葉子の言葉や表情に酔いしれるのだった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫