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梨地

なしじ
名詞
1
標準
文例 · 用例
小さい椀の粥はほゞ掬い食べられて、梨地の底が見えた。
岡本かの子 生々流転 青空文庫
深く澄わたった大気の底に、銀梨地のような星影がちらちらして、水藻のような蒼い濛靄が、一面に地上から這のぼっていた。
徳田秋声 あらくれ 青空文庫
印籠は梨地に定紋を散らしたもので、根附は一角、緒締は珊瑚の五分珠であつた。
森鴎外 伊沢蘭軒 青空文庫
火はいよゝ烈しくなりもてゆきて、東も西も一つらに空赤くなりて、火の子のちりぼふさま梨地といふもののやうにぞ見ゆる。
森鴎外 伊沢蘭軒 青空文庫
火の粉を梨地に点じた蒔絵の、瞬時の断間もなく或は消え或は輝きて、動いて行く円の内部は一点として活きて動かぬ箇所はない。
夏目漱石 幻影の盾 青空文庫
青貝で梅の花を散らした螺鈿の葢は傍へ取り除けられて、梨地の中に篏め込んだ小さな硯がつやつやと濡れていた。
夏目漱石 明暗 青空文庫
梨地の六曲屏風で、死の床を囲って、枕元には、朱塗の経机が置いてあった。
直木三十五 南国太平記 青空文庫
これから考えつきまして、扇面いっぱいに、三万三千三百三十三の松の絵を、梨地蒔絵で、幸阿弥風に――面倒な注文でございますが、御影堂では、夜も昼も、職人から主人からかかりきりで、それもやがて、仕上げに近いと聞きましてございます。
林不忘 元禄十三年 青空文庫