數々
數々
名詞
標準
文例 · 用例
殿、今もし此處におはしまして、例の辱けなき御詞の數々、さては恨みに憎みのそひて御聲あらく、さては勿躰なき御命いまを限りとの給ふとも、我れは此眼の動かんものか、此胸の騷がんものか、動くは逢見たき慾よりなり、騷ぐは下に戀しければなり。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
夏の初の旅、僕は何よりも是が好で、今日まで數々此季節に旅行した、然しあゝ何等の幸福ぞ、胸に樂しい、嬉れしい空想を懷きながら、今夜は彼の娘に遇はれると思ひながら、今夜は彼の清く澄んだ温泉に入られると思ひながら、此好時節に旅行せんとは。
— 国木田独歩 『湯ヶ原より』 青空文庫
獨で畫を書いて居るといへば至極温順しく聞えるが、其癖自分ほど腕白者は同級生の中にないばかりか、校長が持て餘して數々退校を以て嚇したのでも全校第一といふことが分る。
— 国木田独歩 『畫の悲み』 青空文庫
杉の根方には藪柑子、匂ひのないのぎ蘭、すぎごけ、……數々の矮小な自然が生えてゐた。
— 梶井基次郎 『闇への書』 青空文庫
外面の、印度洋に向いた方の、大理石の※り縁には、軒から掛けて、床へ敷く……水晶の簾に、星の數々鏤めたやうな、ぎやまんの燈籠が、十五、晃々點いて並んで居ます。
— 泉鏡太郎 『印度更紗』 青空文庫
是の如き二の事例は實に瑣細の事であるが、萬事此の樣な道理が、暗々の中、冥々の間に行はれて、惜福者は數々福運の來訪を受け、不惜福者は漸く終に福運の來訪を受けざるに至るのであらう。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
これらの數々の祭も、部落を五六軒づつ組にして、輪番で祭る。
— 島木健作 『生活の探求』 青空文庫
なほ多く經なければならないであらうあたらしい試煉の數々について、杉村は思はないわけにはいかなかつたのである。
— 島木健作 『一過程』 青空文庫