掻上
掻上
名詞
標準
文例 · 用例
手紙を巻戻しながら顔を振上げると、乱れたままの後れ毛を、煩さそうに掻上げて、「ついぞ思出しもしなかった、乳なんか飲まれて、さんざ膏を絞られたわ。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」「ああ、難有う、」 とようよう起直って、顱巻を取ると、あわれなほど振りかかる後れ毛を掻上げながら、「何だか、骨が抜けたようで可笑いわ、気障だねえ、ぐったりして。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
時に、妙法蓮華経薬草諭品、第五偈の半を開いたのを左の掌に捧げていたが、右手に支いた力杖を小脇に掻上げ、「そりゃまあ、修行者は修行者だが、まだ全然素人で、どうして御布施を戴くようなものじゃない。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
母も後毛を掻上げて、そして手水を使って、乳母が背後から羽織らせた紋着に手を通して、胸へ水色の下じめを巻いたんだが、自分で、帯を取って〆ようとすると、それなり力が抜けて、膝を支いたので、乳母が慌て確乎抱くと、直に天鵝絨の括枕に鳩尾を圧えて、その上へ胸を伏せたですよ。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
」 言懸けてうつむく時、弛き前髪の垂れけるにぞ、うるさげに掻上ぐるとて、ようやく少年にからみたる、その腕を解きけるが、なお渠が手を握りつつ、「そんな時ばかりじゃあないの。
— 泉鏡花 『化銀杏』 青空文庫
面の色は変へたれども、胸中無量の絶痛は、少しも挙動に露はさで、渠はなほよく静を保ち、徐ろにその筒服を払ひ、頭髪のややのびて、白き額に垂れたるを、左手にやをら掻上げつつ、卓の上に差置きたる帽を片手に取ると斉しく、粛然と身を起して、「諸君。
— 泉鏡花 『海城発電』 青空文庫
」「まあお聞きそれから縞のお召縮緬、裏に紫縮緬の附いた寝衣だったそうだ、そいつを着て、紅梅の扱帯をしめて、蒲団の上で片膝を立てると、お前、後毛を掻上げて、懐紙で白粉をあっちこっち、拭いて取る内に、唇に障るとちょいと紅が附いたろう。
— 泉鏡花 『湯女の魂』 青空文庫
砂に喰止まる事の出來ぬ齒輪車は、一尺進んではズル/″\、二三|尺掻上つてはズル/″\。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫