襖際
ふすまぎわ
名詞
標準
文例 · 用例
里心のついた振られ客のような腰附で、中庭越に下座敷をきょろきょろと※したが、どこへ何んと見当附けたか、案内も待たず、元の二階へも戻らないで、とある一室へのっそりと入って、襖際へ、どさりとまた胡坐になる。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と紺の鯉口に、おなじ幅広の前掛けした、痩せた、色のやや青黒い、陰気だが律儀らしい、まだ三十六七ぐらいな、五分刈りの男が丁寧に襖際に畏まった。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
けげんな顔して引込むと、また窺いいたる、おその、と一所に笑い出して、二人ばたばたと行って襖際へ……声をきき知る表情にて、衝と出づる欣弥を見るや、どぎまぎして勝手へ引込む。
— ――其一幕―― 『錦染滝白糸』 青空文庫
撫子、襖際に出で、ばったり通盆を落し、はっと座ると一所に、白糸もトンと座につき、三人ひとしく会釈す。
— ――其一幕―― 『錦染滝白糸』 青空文庫
」 と、婀娜な目で、襖際から覗くように、友染の裾を曳いた櫛巻の立姿。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫
そのあたりからもみじ葉越しに、駒鳥の囀るような、芸妓らしい女の声がしたのであったが―― 入交って、歯を染めた、陰気な大年増が襖際へ来て、瓶掛に炭を継いで、茶道具を揃えて銀瓶を掛けた。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
耳を澄ますと、蚊帳越の障子のようでもあり、廊下の雨戸のようでもあり、次の間と隔ての襖際……また柱の根かとも思われて、カタカタ、カタカタと響く――あの茶立虫とも聞えれば、壁の中で蝙蝠が鳴くようでもあるし、縁の下で、蟇が、コトコトと云うとも考えられる。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
」 と優しいのがツンと立って、襖際に横にした三味線を邪険に取って、衝と縦様に引立てる。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫