妖
あやかし
名詞
標準
文例 · 用例
「白楊の枝の上で体をゆすぶる」セイレネスの妖態や「サチロス仲間に気に入る」バックス祭尼の狂態、すなわち腰部を左右に振って現実の露骨のうちに演ずる西洋流の媚態は、「いき」とは極めて縁遠い。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
枝垂桜は夢のように浮かびでて現代的の照明を妖艶な全身に浴びている。
— 九鬼周造 『祇園の枝垂桜』 青空文庫
人は夜の夢の中で、樹人や火人であつた頃の、先祖の古い記憶を再現し、いつも我等の生命を脅かして居たところの、妖怪變化の恐ろしい姿や、得體の解らぬ怪獸やの、魑魅魍魎の大群に取り圍まれて魘されてゐる。
— 萩原朔太郎 『夢』 青空文庫
僕等は電光の森かげから夕闇のくる地平の方から烟の淡じろい影のやうでしだいにちかづく巨像をおぼえたなにかの妖しい相貌に見える魔物の迫れる恐れをかんじた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
荷主よ水先案内よいまおそろしい嵐のまへに むくむくと盛りあがる雲を見ないか妖魔のあれ狂ふすがたを見ないかたちまち帆柱は裂きくだかれするどく笛のさけばれさうして船腹の浮きあがる青じろい死魚を見る。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
よしんば醉つぱらつても青白い妖怪の酒盃は、「未知」を語らない。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
それが現實の世界に穹窿してゐる、現實の青空であることを、初めに人人が錯覺することから、その油繪具のワニスの匂ひと、非現實的に美しい青色とが、この世の外の海市のやうに、阿片の夢に見る空のやうに、妖しい夢魔の幻覺を呼び起すのである。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
彼等の名は、餓鬼、天人、妖精等と呼ばれ、我等の身邊に近く住んで、宇宙の至る所に瀰漫してゐる。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫