響音
きょうおん
名詞
標準
文例 · 用例
されば今夜六月の良夜なりとはいへ、遠いい物音が、心地よく風に送られて来るとはいへ、なにがなし悲しい思ひであるのは、消えたばかしの鉄橋の響音、大河の、その鉄橋の上方に、空はぼんやりと石盤色であるのです。
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
嗚咽の間より情の嵩じた響音に呼ぶ。
— 岡本かの子 『阿難と呪術師の娘』 青空文庫
明い空に渦巻き登る煤煙、スク/\と立つ煙突、トタン屋根の列車式の工場、黒ずむだ赤煉瓦の建物、埃に塗された白堊、破れた硝子窓、そして時々耳をつんざくやうに起る破壊的の大響音……由三は其の音其の物象に、一種謂はれぬ不愉快と威壓を感じながら、崩れかツた長い長い土塀に沿ツて小石川の方に歩いた。
— 三島霜川 『昔の女』 青空文庫
一種の背徳が、戦争の時のやうな響音で、直吉の耳底にすさまじく鳴り響いた。
— 林芙美子 『瀑布』 青空文庫
電車の響音、自動車の警笛、群集の靴音、それらを超えて空中に鳴り響く広告塔のラウド・スピーカー。
— 豊島与志雄 『蛸の如きもの』 青空文庫
暑い瘴気の層を透して人々は昼の星宿の回転する響音を聴いた。
— 神西清 『水に沈むロメオとユリヤ』 青空文庫
『三題噺魚屋茶碗』というしばいは序幕の「両国船中の場」と「同西河岸の場」とだけ……ということは『時鳥水響音』としてはじめに書下された部分だけ……が有名であとから書足された二幕目以下は上演される機会もすくなく人気にも乏しい。
— 久保田万太郎 『上野界隈』 青空文庫
光り物と烈しい響音(天床裏を石臼でも転げるような)と哀哭悲鳴とが建物ぜんたいを包む、それは正に「化物どもが獲物を迎えて大|饗宴をひらく」ようだと彼女は記述している。
— 山本周五郎 『風流化物屋敷』 青空文庫