怺
怺
名詞
標準
文例 · 用例
それからなほ三十分も飲んだ後、辞して立たうとすると、先刻は腰も打つたとみえ、腰が痛くてよろけさうになり、医者に助けられて自動車に入れられた時は、なんとも羞しく、玄関に立つて可笑しさを怺へてゐた奥さんの顔は、自動車が田圃の中の道路を走つてゐる間中、眼に浮かぶのであつた。
— 中原中也 『亡弟』 青空文庫
でございますから、これからは、何をおあがりになっても、何をなさってもよろしゅうございます」 と、やはり、へんな言いかたをなさるので、私は噴き出したいのを怺えるのに骨が折れた。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
直治ひとり、先生とお供の看護婦さんを送って行って、やがて帰って来た直治の顔を見ると、それは泣きたいのを怺えている顔だった。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺え、陽気に歌をうたい、手を拍った。
— 太宰治 『走れメロス』 青空文庫
けれども、この悲しさも、私の宿命の中に規定されて在ったのだと、もっともらしく自分に言い聞かせ、怺えてここで仕事をはじめた。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫
私は一昼夜眠らずに怺えた。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫
私には侘しさを怺える力が無かった。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫
そのほうの事でしたら、私は、ちっとも心配して居りませぬし、また、笑って怺える事も出来るのですけれど、他に、もっと、つらい事がございます。
— 太宰治 『きりぎりす』 青空文庫