掩
掩
名詞
標準
文例 · 用例
それから先は両側の松林が幹を差替わす許に遠くつづいて石畳の路を掩うている、奥にはほんのり暗くて何のあるのも判らない、ただ敷石の道が白く長く帯を延した様に奥深く通じて居るのが見える許りである、予等二人が十五六|間も進んで這入ってゆくと漸く前面にぼんやり萱葺の門が見えだした。
— 伊藤左千夫 『八幡の森』 青空文庫
手摺窓の障子を明けて頭を出すと、椎の枝が青空を遮って北を掩うている。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
促音は記号がない故、書きあらわされていない)、ヒ→促音(「冀ひて」がネガテ、「掩ひて」がオホテ)、グ→ウ(「藁沓」がワラウヅ)などは院政時代からあらわれている。
— 橋本進吉 『国語音韻の変遷』 青空文庫
「願くは汝我を陰府に蔵し、汝の震怒の息むまで我を掩い、わがために期を定めしかして我を念い給え」(十三)とは再生の欲求の発表である。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
「地よわが血を掩うなかれ、わが号叫は休む処を得ざれ」という。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
そしてその屍で掩われている谷の上を風はひゅうひゅうと吹いて通っています。
— 太宰治 『正義と微笑』 青空文庫
しかし同じ顔を見た時の印象が、見なかった時の印象を掩蔽してそう思わせるのかもしれない。
— 寺田寅彦 『雑記(1)』 青空文庫
また四月英国の閉塞隊がベルギー海岸のドイツ潜水艇の根拠地を襲撃した場合にも、味方の行動を掩蔽するために煤煙の障屏を使用しようとしたのが肝心の時に風が変って非常の違算を来たしたという事である。
— 寺田寅彦 『戦争と気象学』 青空文庫