小船
こぶね
名詞
標準
文例 · 用例
また平家琵琶をもお好みになられ、しばしば琵琶法師をお召しになり、壇浦合戦など最もお気にいりの御様子で、「新中納言知盛卿、小船に乗つて、急ぎ御所の御船へ参らせ給ひて『世の中は今はかくと覚え候ふ。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
例えば郷里の家の前の流れに家鴨が沢山並んでいて、夕方になると上流の方の飼主が小船で連れに来るというような何でもない話でさえ、何かしら一種の夢のようなものを幼い頭の中に描かせると見える。
— 寺田寅彦 『小さな出来事』 青空文庫
その頃はまだ珍しかったスエズ運河を見、蜃気楼に欺されたりして、カイロに着き、そこから小船に乗ってナイル河を遡った。
— 寺田寅彦 『レーリー卿(Lord Rayleigh)』 青空文庫
この度の娘の父は、さまでにもなけれども、小船一つで網を打つが、海月ほどにしょぼりと拡げて、泡にも足らぬ小魚を掬う。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
小船が波に放たれます時、渚の砂に、父の倒伏しました処は、あの、ちょうど夕月に紫の枝珊瑚を抱きました処なのです。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
ですから、人はそうして歎いても、私は小船で流されますのを、さまで、慌騒ぎも、泣悲しみも、落着過ぎもしなかったんです。
— 泉鏡花 『海神別荘』 青空文庫
成程、島を越した向う岸の萩の根に、一人乗るほどの小船が見える。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫
池で、船の中へ鯉が飛込むと、弟子たちが手を拍つ、立騒ぐ声が響いて、最初は女中が小船で来た。
— 泉鏡花 『伯爵の釵』 青空文庫