草いきれ
くさいきれ
名詞
標準
strong smell of grass (esp. in summer heat)
文例 · 用例
何しろ路傍の草いきれが恐しい、大鳥の卵見たようなものなんぞ足許にごろごろしている茂り塩梅。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
難儀さも、蛇も、毛虫も、鳥の卵も、草いきれも、記してあるはずはないのじゃから、さっぱりと畳んで懐に入れて、うむとこの乳の下へ念仏を唱え込んで立直ったはよいが、息も引かぬ内に情無い長虫が路を切った。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
十|里まはりに笠三|蓋と諺にも言ふ、その笠三|蓋とても、夏は水のない草いきれ、冬は草も見ぬ吹雪のために、倒れたり、埋れたり、行方も知れなくなつたと聞く。
— 泉鏡太郎 『十和田湖』 青空文庫
草いきれは幻の煙を噴く。
— 泉鏡太郎 『麻を刈る』 青空文庫
ちかきころ水無月中旬、二十日余り照り続きたる、けふ日ざかりの、鼓子花さへ草いきれに色褪せて、砂も、石も、きら/\と光を帯びて、松の老木の梢より、糸を乱せる如き薄き煙の立ちのぼるは、木精とか言ふものならむ。
— 泉鏡花 『紫陽花』 青空文庫
新前橋驛野に新しき停車場は建てられたり便所の扉風にふかれペンキの匂ひ草いきれの中に強しや。
— 萩原朔太郎 『純情小曲集』 青空文庫
はげしい草いきれと、土の匂の中に顔を押付けたまま、彼は長い間、泣いた。
— 中島敦 『プウルの傍で』 青空文庫
息もつかず、もうもうと四面の壁の息を吸って昇るのが草いきれに包まれながら、性の知れない、魔ものの胴中を、くり抜きに、うろついている心地がするので、たださえ心臓の苦しいのが、悪酔に嘔気がついた。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫