息吹き
いぶき
名詞
標準
文例 · 用例
故に、芸術とは、興味が、笑ひといふ自然的作品よりも、作品といふ人力の息吹きのかゝつたものを作り出すためには、興味そのものの内部に、生活人よりも格段と広い世界を有さねばならぬ。
— 中原中也 『芸術論覚え書』 青空文庫
しばらくして、この傘を大開きに開く、鼻を嘯き、息吹きを放ち、毒を嘯いて、「取て噛もう、取て噛もう。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
あるいは、聖霊の息吹きを受けて、つめたい花びらをいちまい胸の中に宿したような気持ち。
— 太宰治 『十二月八日』 青空文庫
岩手山巓外輪山の夜明け方、 息吹きも白み競ひ立ち、三十三の石神に、 米を注ぎて奔り行く。
— 宮沢賢治 『文語詩稿 一百篇』 青空文庫
埃及のカタコンブから掘出した死蝋であるのか、西蔵の洞窟から運び出した乾酪の屍体であるのか、永くいのちの息吹きを絶った一つの物質である。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
女は思慮分別も融けるような男の息吹きを身体に感じた。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
たゞ、この美しい晶玉になって、照らしよくなった骨も、それ自体、氷よりも冷たく鉄よりも硬くなっているのに、いのちの息吹き返さすその香油が何物であるか何処にあるのか、私の中なる母は、いま一生懸命考えているところです。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
さりとて、身震いでもなく、いわばそれは何かの息吹きか、それとも誰かが近づいてくる気配とでも言うか、そんな感じであった。
— ツルゲーネフ 『はつ恋』 青空文庫