槃
槃
名詞
標準
文例 · 用例
そうしてまた、流転、無常を差別相の形式と見、空無、涅槃を平等相の原理とする仏教の世界観、悪縁にむかって諦めを説き、運命に対して静観を教える宗教的人生観が背景をなして、「いき」のうちのこの契機を強調しかつ純化していることは疑いない。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
思想は一つの意匠であるか鬱蒼としげつた森林の樹木のかげでひとつの思想を歩ませながら佛は蒼明の自然を感じたどんな瞑想をもいきいきとさせどんな涅槃にも溶け入るやうなそんな美しい月夜をみた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
涅槃花ざかりなる菩提樹の下密林の影のふかいところでかのひとの思惟にうかぶ理性の、幻想の、情感の、いとも美しい神祕をおもふ。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
涅槃は熱病の夜あけにしらむ青白い月の光のやうだ憂鬱なる 憂鬱なるあまりに憂鬱なる厭世思想の否定の、絶望の、惱みの樹蔭にただよふ靜かな月影哀傷の雲間にうつる合歡の花だ。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
涅槃は熱帶の夜明けにひらく巨大の美しい蓮華の花かふしぎな幻想のまらりや熱かわたしは宗教の祕密をおそれるああかの神祕なるひとつのいめえぢ――「美しき死」への誘惑。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
涅槃は媚藥の夢にもよほすふしぎな淫慾の悶えのやうでそれらのなまめかしい救世の情緒は春の夜に聽く笛のやうだ。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
しかもその地獄から解脱するには、寂滅為楽の涅槃に入るより仕方がないのだ。
— 萩原朔太郎 『老年と人生』 青空文庫
どんな瞑想をもいきいきとさせどんな涅槃にも溶け入るやうなそんな美しい月夜をみた。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫