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来向

きむき
名詞
1
標準
文例 · 用例
天の川を数知れない氷がうつくしい燐光をはなちながらお互ぶっつかり合ってまるで花火のやうにパチパチ云ひながら流れて来向ふには大犬座のまばゆい三角標がかゞやきました。
宮沢賢治 〔「銀河鉄道の夜」初期形一〕 青空文庫
その晩、庸三が煩く虫の集まって来る電燈の下で、東京の新聞に送る短かいものを書いていると、その時から葉子は発熱して、茶の間の仏壇のある方から出入りのできる、店の横にある往来向きの部屋で床に就いてしまった。
徳田秋声 仮装人物 青空文庫
気がつまって来ると、煙草の煙の籠ったなかに、筆を執っている笹村の傍へ来て、往来向きの窓を開けて外を眺めた。
徳田秋声 青空文庫
この総督御本陣直属の人数は二百六人、それに用物人足五十四人、家来向き諸荷物人足五十二人、赤陣羽織を着た十六人のものが赤地に菊の御紋のついた錦の御旗と、同じ白旗とをささげて来た。
第二部上 夜明け前 青空文庫
鬼王丸は下座に着きまず恭しく一|揖したが、「これはこれはオースチン老師、市之丞殿に芳江姫、よくこそご来向くだされました。
国枝史郎 蔦葛木曽棧 青空文庫
これはむやみと景気がよくて大衆的大人気で、いたるところ向う鉢巻三味線入りで、車座になって、お飯櫃のふたをかぶせた三本足の竹の棒に神の来向を信じ、そら、足をあげた、ハイとおっしゃったとはしゃいだ。
長谷川時雨 勝川花菊の一生 青空文庫
村の生活を基礎とした国の生活、其中心なる宮廷、古く溯る程、神を迎へ神を祭る場所と言ふ義の明らかに見える祭りの場所としての宮廷にも、春の訪れに来向ふ者は、常世神でなく、山の神となつた。
折口信夫 山のことぶれ 青空文庫
吾子の為了なんだ荒び心で、吾子よりももつと深い猛び心を持つた者の、大和に来向ふのを、待ち押へ、塞へ防いで居ろと仰せられた。
――初稿版―― 死者の書 青空文庫