彩糸
さいし
名詞
標準
文例 · 用例
そのいずれも彩糸は使わないで、ひとえに浅みどりの柳の葉を、針で運んで縫ったように、姿を通して涼しさの靡くと同時に、袖にも褄にもすらすらと寂しの添った、痩せぎすな美しい女に、――今のを、ト言掛けると、婦人は黙って頷いた。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
七彩糸と管に巻く、小※の糸を引き延べて、十二の筬に機足踏む。
— 長塚節 『長塚節歌集 中』 青空文庫
表装の布地はチョット見たところ織物のようであるが、眼を近づけて見るとそれは見えるか見えぬ位の細かい彩糸や金銀の糸で、極く薄い絹地の目を拾いつつ、一寸大の唐獅子の群れを一匹|毎に色を変えて隙間なく刺した物で、貴いものである事がシミジミとわかって来る。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
すなわちこの毒を検するに彩糸を以てす。
— 夢野久作 『暗黒公使』 青空文庫
第五話 五彩糸 一「牡丹燈籠」はもて囃された、ほんとうに。
— 正岡容 『小説 圓朝』 青空文庫
恰も何かそこに影のようなものでも折折見出さなければならないように……しかし童子はおとなしく、ただ小さい跪座をくんで、ひとりで、それがひとりであるために充分であるように、丸めた彩糸をいくつも女の膝の上にならべていた。
— 室生犀星 『後の日の童子』 青空文庫