通せん坊
とおせんぼう
名詞
標準
文例 · 用例
碁盤の目ほどに窓の多いデパートメント、タンクを伏せたように重っ苦しい大屋根、長方形の箱を、手品師の手際で累積したようなアメリカ式鉄筋コンクリートの高層築造物は、垂直の圧力を通行人の頭上に加えて虚空の「通せん坊」をしあっている。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
これも風呂敷包を中結えして西行背負に背負っていたが、道中へ、弱々と出て来たので、横に引張合った杖が、一方通せん坊になって、道程標の辻の処で、教授は足を留めて前へ通した。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
いえね、実はね、……小児衆が、通せん坊をして、わやわや囃しているから、気になってね、密と様子を見て案じていたの。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
そしてこの村から川上の方を望めば、いずれ川上の方の事だから高いには相違ないが、恐ろしい高い山々が、余り高くって天に閊えそうだからわざと首を縮めているというような恰好をして、がん張っている状態は、あっちの邦土は誰にも見せないと、意地悪く通せん坊をしているようにも見える位だ。
— 幸田露伴 『雁坂越』 青空文庫
「何を為されます」「通せん坊、通せんぼ」 南玉は、両手を拡げて、足踏しながら、深雪の行方をふさいだ。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
漸くに庵室の門まで辿り着くと、扉のなくなつた屋根の下には、樵夫が薪を積み上げて、通せん坊をしてゐたが、徑は其の脇の土塀の崩れたところに續いて、其處から人の往來する痕があつた。
— 上司小劍 『ごりがん』 青空文庫
非常召集の命令が出たとみえ、森の出口のところには、棒をもった警官隊がずらりと人垣をつくって通せん坊をしているのが見えた。
— 海野十三 『火星兵団』 青空文庫
私を見かけると、大きな手を広げて通せん坊をします。
— 小金井喜美子 『鴎外の思い出』 青空文庫