町幅
まちはば
名詞
標準
文例 · 用例
やがて二階屋が建続き、町幅が糸のよう、月の光を廂で覆うて、両側の暗い軒に、掛行燈が疎に白く、枯柳に星が乱れて、壁の蒼いのが処々。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
この春の日向の道さえ、寂びれた町の形さえ、行燈に似て、しかもその白けた明に映る…… 表に、御泊りとかいた字の、その影法師のように、町幅の真ただ中とも思う処に、曳棄てたらしい荷車が一台、屋台を乗せてガタリとある。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
その物売の、布子の円い背中なぞへ、同じ木賃宿のそこが歪みなりの角から、町幅を、一息、苗代形に幅の広くなった処があって、思いがけず甍の堆い屋形が一軒。
— 泉鏡花 『陽炎座』 青空文庫
町幅は概して狭く、大通でさえも、漸く二、三|間位であった。
— 散文詩風な小説 『猫町』 青空文庫
その西の手から東の手へ、一条の糸を渡したので町幅を截って引張合って、はらはらと走り、三ツ四ツ小さな顔が、交る交る見返り、見返り、「雁が一羽|懸った、」「懸った、懸った。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
町幅が狭いんですから、すれ違って前へ駆け抜けたと思うと、振返った若衆と一所に、腕車の上から見なすったのは先刻のお嬢様、ええ、お夏さん。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
町幅一杯ともいうべき竜宮城に擬したる大燈籠の中に幾十の火を点ぜるものなど、火光美しく透きて殊に目ざましく鮮やかなりし。
— 幸田露伴 『突貫紀行』 青空文庫
町幅のだだっ広い、単調で粗雑な長い大通りは、どこを見向いても陰鬱に闃寂していたが、その癖寒い冬の夕暮のあわただしい物音が、荒れた町の底に淀んでいた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫