趺座
趺座
名詞
標準
文例 · 用例
高さ四尺幅三尺程の大幅の中には、画面一杯に羽を拡げた印度孔雀に、駕し左右四つの手に、各宝珠を捧げ説法の印を結んだ異形の女身仏が、背上の蓮台の上に趺座しているのだ。
— 小栗虫太郎 『夢殿殺人事件』 青空文庫
普通の法衣の如く輪袈裟をかけ、結跏趺座して弥勒の印を結びたるが、作者の自像かと思わるる節あり。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
一寸家つゞきを離れて、左右と後ろとに、鬱蒼たる小山を負ひて、三丈三尺の尊像、端然として趺座し給ふ。
— 大町桂月 『鎌倉大仏論』 青空文庫
その挙動を見るとすこぶる傍若無人で、室に入るや否やいきなり趺座をかき、口角に泡を飛ばして盛んに議論する。
— 新渡戸稲造 『自警録』 青空文庫
露出した膝頭を気にして、衣服で掩わんとしたり、あるいは趺座をかいた足を幾分かむすび直し、正座の姿に移らんとした。
— 新渡戸稲造 『自警録』 青空文庫
柳沢が家にいるというので、私はいくらか安心しながら、婆さんがお上んなさいというのを、すぐには上らず、婆さんに案内をさせて、高い階段を上ってゆくと、柳沢はあの小さい体格に新調の荒い銘仙の茶と黒との伝法な厚褞袍を着て、机の前にどっしりと趺座をかいている。
— 近松秋江 『うつり香』 青空文庫
」とお宮は、入って来るからちょうど真正面にそっち向きに趺座をかいていた柳沢の顔を見て燥いだように笑いかかった。
— 近松秋江 『うつり香』 青空文庫
」 誰れもいない喜久井町の家で、机の前に我れながら悄然と趺座をかいて、そんな独言をいっていると自分の言葉に急きあげて来て悲しいやら哀れなやら悔しいやらに洪水の湧き出るように涙が滲んで何も見えなくなってしまう。
— 近松秋江 『うつり香』 青空文庫