糸筋
いとすじ
名詞
標準
文例 · 用例
で、やがて娘は路――路といっても人の足の踏む分だけを残して両方からは小草が埋めている糸筋ほどの路へ出て、その狭い路を源三と一緒に仲好く肩を駢べて去った。
— 幸田露伴 『雁坂越』 青空文庫
今更未練が出てお勢を捨るなどという事は勿躰なくて出来ず、と言ッて叔母に詫言を言うも無念、あれも厭なりこれも厭なりで思案の糸筋が乱れ出し、肚の裏では上を下へとゴッタ返えすが、この時より既にどうやら人が止めずとも遂には我から止まりそうな心地がせられた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
干し列べた平茎には、もはや糸筋ほどの日影もささぬ。
— 鈴木三重吉 『千鳥』 青空文庫
話しながら、事柄の経過の糸筋を整理しているらしいのである。
— 森鴎外 『青年』 青空文庫
創口の縫い目はぴったりと合って糸筋のような赤い痕が残っていた。
— 田中貢太郎 『陸判』 青空文庫
一列はその度毎にまるで、のびたり、ちゞんだりくねつたり、する黒い糸筋のやうに見えた。
— 小林多喜二 『防雪林』 青空文庫
静かなところで想い起こして見ると、あだかも目に見えない細い糸筋のように、いろいろな思いがそれからそれと引き出される。
— 第二部下 『夜明け前』 青空文庫
と音も無く壁が閉じた、糸筋ほどの継目も見えない。
— 国枝史郎 『天主閣の音』 青空文庫