返翰
へんかん
名詞
標準
文例 · 用例
盤子につかはされ候御返翰は、熱田は人々取り込み候へば、封のまゝにて岡崎まで持ち參り候て、窓の破れより風吹き入り、戸の透間より月泄りかゝれる、いをの油のなまぐさきよごれ行燈の前にて、御文まづ開く。
— 島崎藤村 『桃の雫』 青空文庫
其の時妹子にも返翰を渡し、裴世清には別に國書を授けて遣はしたが、妹子は途中で百濟人に盜まれたと謂つて返翰を持つて來ない。
— 内藤湖南 『聖徳太子』 青空文庫
宗義智はこの数年間|屡次にわたつて朝鮮側と屈辱的な折衝を重ね、太閤の意志とうらはらな返翰を得て、之を中途で握りつぶしてゐたのであるから、露顕の恐怖に血迷つた。
— 坂口安吾 『二流の人』 青空文庫
」 理論は理論としておいて――この後の場合の「人々」というのがオッペルトの手記によると「役人」で、しかも大院君から一行へあてた「返翰」をもたらして、このとき東検島沖のチャイナ号へやってきた使者なのだから、事実としては、つじつまが合いかねてくる。
— 服部之総 『撥陵遠征隊』 青空文庫
理学博士|武田久吉君からの返翰によれば、「御下問の件小生自身何の経験も御座いません」とて、岡村金太郎博士の『海藻と人生』と遠藤|吉三郎博士の『海産植物学』とを引用して報ぜられた。
— 牧野富太郎 『植物一日一題』 青空文庫
ロシヤ使節に對する水戸齊昭のある種の意見、阿部の返翰などの記録がそれを物語つてゐるが、さらにプーチヤチンの軍艦一隻は海嘯を喰つて破損、修理のため曳航中宮島沖で沈沒、プーチヤチン自身ですら身をもつて海岸に泳ぎついたといふ遭難事件もあつた。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
ところが川路から下田奉行への返翰でみると、その本木昌造も劇務のため病氣になつてゐるし、森山はまた川路の手足となつて、日露修好條約の後始末をしてゐるのだから手が離せない。
— 徳永直 『光をかかぐる人々』 青空文庫
一、この忠告を採用し給わんと欲せば 殿下親筆を以て返翰を賜わるべく、然らばまた腹心の臣を奉らん。
— 徳富蘇峰 『吉田松陰』 青空文庫