銅壺
どうこ
名詞
標準
文例 · 用例
唯今の注進に、ソレと急いで、銅壺の燗を引抜いて、長火鉢の前を衝と立ち状に来た。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と火箸を圧えたそうな白い手が、銅壺の湯気を除けて、ちらちらして、「昨夜にも、お迎いに上げましょうと思ったけれど、一度、寂しい思をさして置かないと、他国へ来て、友達の難有さが分らないんですもの。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と肉色の絽の長襦袢で、絽|縮緬の褄摺る音ない、するすると長火鉢の前へ行って、科よく覗いて見て、「まあ、辛うござんすよ、これじゃ、」 と銅壺の湯を注して、杓文字で一つ軽く圧えて、「お装け申しましょう、」と艶麗に云う。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と唇を横舐めずって、熊沢がぬっと突出した猪口に、酌をしようとして、銅壺から抜きかけた銚子の手を留め、お千さんが、「どうしたの。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫
わざと短い煙管で、真新しい銅壺に並んで、立膝で吹かしながら、雪の素顔で、廓をちらつく影法師を見て思出したか。
— 泉鏡花 『第二菎蒻本』 青空文庫
料理などは、むだな事だ、と有合せの卵二つを銅壺に投げ入れ、一ばん手数のかからぬ料理、うで卵にして塩を添え、酒と一緒に差出せば、男は、へんな顔をして、「これは、卵ですか。
— 太宰治 『新釈諸国噺』 青空文庫
船の胴間でけんどん箱から食品を取り出して膳に配置したり、箱火鉢の銅壺に徳利を浸したりしていたおきみは、あとを船頭に任して表の間へ膳を運んで来ました。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
女中の房は手早く燗瓶を銅壺に入れ、食卓の布を除つた。
— 国木田独歩 『節操』 青空文庫